「子どもに『自己肯定感』を与えてあげられる先生に」チャイルドカウンセラーが語った”子どもの心のケア”で大事なこと

「『頑張ったら自分もできるんだ!』そういう成功体験の積み重ねが、子どもの自信に繋がって『自己肯定感』が育まれていく。大人が安定した情緒で愛情をたくさん注げば、子どもの心も安定して、自己肯定感を持った人に育つんです」

そう語ってくれたのは、幼児教育に26年もの間携わってきた今中紀子さんです。

今中さんは、『EQWELチャイルドアカデミー』国分寺駅前教室の運営をしながら、不登校、集団生活に困り感をもつ子どもの支援を行う特定非営利活動法人『星槎(せいさ)研究所』の相談員も務めています。

さらに、チャイルドカウンセラーの資格を活かしながら、療育やカウンセリングが必要な子どもたちのケアをしたり、東日本大震災の被災地・南相馬市の小学校にも定期的に訪問したりなど、子どもたちを全力でサポートするお仕事をしています。

今中紀子さん取材1

今中紀子。幼児教室『EQWELチャイルドアカデミー』国分寺駅前教室の運営責任者。ひきこもりや不登校児童、発達障害とその周辺の子どもたちを支援する特定非営利活動法人『星槎研究所』に相談員として所属。震災後の2012年より、南相馬市の小学校に定期訪問している。チャイルドカウンセラー、支援教育専門士、家族療法カウンセラー、保育士資格を保有。

今回、今中さんのお話を伺いにウーモア編集部がお邪魔したのはEQWELチャイルドアカデミー国分寺駅前教室。

EQWELチャイルドアカデミーは、子どもたちの月齢に応じた幼児教育プログラムを提供する幼児教室です。
子どもの脳と心の成長に働きかける“学び”を保護者の方や先生たちと楽しみながら、子どもが持つ能力を伸ばす教育を行っています。

EQWEL チャイルドアカデミー 国分寺教室
EQWEL(イクウェル)チャイルドアカデミー

明るく家庭的な雰囲気の教室で、チャイルドカウンセリングに関するお話や、これからの子どもが生き抜く上で大切なことを聞いてきました。

本当はもっと仕事がしたかった。38歳でひょんなことから幼児教育の世界へ--

幼児教育や子どもの心のケアに関するお仕事をなさって26年目の今中さん。なぜ、子どもに関わる仕事をしようと思ったのですか?

今中:
大学を卒業して1年後、23歳のときに結婚しました。
当時は女性は結婚したら仕事を辞めることが主流だったので、結婚を機に退職したんですが、本当はもっと仕事がしたかったんです。
なので、子どもが大きくなって手が空いたころに、また仕事を始めようと思っていました。

38歳のときに新聞の求人チラシで、偶然幼児教室の先生の募集を見つけまして。
「子どもにこういう教育をしたら、どんなふうに育つのかな?」と興味が湧きました。

そうして週に3回、幼児教室の先生としてパートの仕事を始めまして。

子どもに関係する仕事をしていたわけでもなければ、大学で専門的に学んでいたわけでもなかったので、幼児教育との出会いは本当にたまたまでしたね(笑)。

そのうち正社員になって、7年目には教室長を任されました。
当時勤めていた幼児教室は全国に教室があったんですが、気づいたら13校の統括部長に選任されまして。

その後、取締役も務めました。
今考えるとなかなかできない体験ができて幸せだと思います。

―パートからスタートして、最後は取締役にまでなるとは……!今中さんの実力がうかがえます。

「自分には何もないと思った」ことが、資格取得のきっかけ

幼児教室を経営する立場から、なぜチャイルドカウンセラーをはじめとして、子どもに関する資格を取得したのですか?

今中:
前職の会社には17年間勤めました。
辞めた後、前職時代から学ぶことが多くあった『星槎研究所』の会長に「うちで何かやらない?」と声をかけていただきました。

退職して、気持ちが落ち込んでいたときのお声がけで、それがなかったら今の私はいません。ですから、とても感謝しています。

それから半年後、星槎に所属することになりました。

そのとき、ふと思ったんです。
「会社のような組織や肩書き的なところから離れてみると、私には何もないんだわ」って。

17年間、幼児教育に関する経験は積んだけれども、その経験は誰が見てもすぐに分かるようなものじゃない。

経験を裏付けてくれる証明が、自分には何もないじゃない、って思ったんです。

今中紀子さん取材2

―なるほど……。感覚知では知っているのに、もったいないですね。

今中:
自分がやってきたことの証明が欲しかったし、感覚知として知っていることをきちんと学問として学びたいという意欲が湧きました。だから、資格を取ろうと思ったんです。

―チャイルドカウンセラーの資格はそのとき取得したんですか?

今中:
はい。あと、子どもに関することを改めて専門的に勉強したかったので、星槎大学の科目履修生になりました。
チャイルドカウンセラーと並行して、大学の中で「支援教育専門士」という資格も取りまして。

長年幼児教育をやってきたなかで感じていたんですが、特別な支援やケアが必要な子どもたちはたくさんいます。

そういった子どもたちに適切な対応ができるスキルも欲しかったし、子どもに関することを改めて勉強してみたかったんです。

―資格の勉強をしたことで、感覚知や経験で分かっていたことが、改めて理論化されたり言語化されたりしたんですね。

今中:
そうです。なんとなく知ってた、分かってたということが「こういう理屈でこうなっているんだ」と理論化・言語化されたので、視野も広がりました。

ああ、私がしてきたことってこういうことだったんだな、間違ってなかったんだなと、自信を持つことにも繋がったように思います。

チャイルドカウンセリングに欠かせないのは「大人の心のケア」

今中:
チャイルドカウンセラーと支援教育専門士の資格を取った後、星槎研究所で仕事をはじめて、社会に不安をもつ青年や不登校の子どもたちと出会いました。

そこで改めて、幼児教育の大切さを実感したんです。

どれだけ周りの大人が安定した情緒のもとに子どもに愛情を注ぎ、接してきたかによって、その後の子どもの心のあり方や将来は変わります。

大人の心の安定感が、子どもの心の安定感に与える影響って、ものすごく大きいんです。

―星槎での療育や支援活動を通じて、ご自身が長年携わってきた幼児教育の重要さを再発見したんですね。

今中:
そうです。子どもの「自己肯定感」って、小さいときに大人から安定した愛情をたくさん注いでもらうことで育ちます。

自己肯定感を持って成長することが、社会に不安を感じたり不登校になったりすることの回避に繋がるのではと、私は思っています。

今中さんは現在、東日本大震災の被災地である福島県の南相馬市の小学校に、子どもたちの心のケアのために訪問しています。どのような支援活動を行っているんですか?

今中:
南相馬市の小学校に訪問しはじめたのは2012年のことでした。今年で7年目を迎えます。
当初は月に2回ほど、現地に3泊ほどしていましたが、最近は月に1回、2泊ぐらいの頻度で通っています。

最初は、「地震や津波で子どもたちが怖がっていないか?」ということをヒアリングしていたんですが、ふたを開けてみると実はそういう悩みって、ほぼないんですよ。

―えっ、そうなんですか?

今中:
被災地の子どもたちの心に起こった問題は、自然災害に対する恐怖心などよりも、自然災害がきっかけで起こってしまった「家庭の問題」の方が大きかったんです。

震災をきっかけに、家庭がバラバラになってしまったり家族構成が変わってしまったり、今までの家庭環境が変わることが大人にも子どもにも大きな影響を与えていたんです。

今中紀子さん取材3

今中:
さっきの話と繋がりますが、大人の情緒の安定感は、子どもに多大な影響を及ぼします。
家庭環境が変わって大人が不安になるからこそ、子どもも不安になります。

保護者の方や先生方など、周囲の大人の心の状態が、回り回って子どもたちの心の状態に影響を与えるんです。
その結果、傷ついたり、悩みを抱えてしまう子どもたちが増える。

だからこそ、大人の心のケアが重要になってきます。

そもそも、チャイルドカウンセリングには大人の心のケアも含まれているんですよ。
ですから子どもだけでなく、周りの大人の方々へのカウンセリングも重要なんです。
実際に、私は保護者の方だけでなく子どもたちの通う学校の先生方の悩みも聞くようにしています。

―大人の心のケアが、子どもの心のケアに繋がるんですね。

資格取得を通じて勉強したことが、被災地での支援活動にも役立った

チャイルドカウンセリングを行うなかで、資格の勉強で培った知識が役立ったと感じることはありますか?

今中:
もちろん、ありますよ。
たとえば、カウンセリング時の話し方ひとつをとっても、基礎的な知識があります。
そういった基礎知識の勉強は、基本的なことですがやっぱり大切です。

ただし、それを実践できなければ、いくら勉強しても適切なケアはできません。なので、知識を実践することは常に意識しています。

―たとえばどのような場面で資格の成果を実感しますか?

今中:
南相馬市でのカウンセリングで、最初は悩みを話せなかった子どもたちも、今ではなんでも話してくれるようになったことでしょうか。

家庭内や学校での悩みを第三者に相談することは「恥ずかしい」ことでもなんでもない。
「困ったときは、人に相談していい。頼っていいんだ」
そういう意識の土壌作りに力を活かせたかな、と思っています。

今中紀子さん取材記事4

今中:
チャイルドカウンセリングには大人の心のケアも関わってくるので、先生方も気軽に悩みを相談してくれるようになりました。
これは被災地で生活する子どもたちや大人たちにとって、とても大きなことだと思っています。

少し話は変わりますが、被災地から離れたところで生活していると、つい震災のことを忘れてしまいそうになる方もいらっしゃると思うんです。
でも、現実はまだまだ、終わってません。それを忘れないで頂きたいなと、毎月被災地に訪問している身としては思いますね。

これからの子どもたちに必要なのは、たくましく生きる力と自己肯定感

今中さんが考える今の幼児教育や、これからの子どもたちの心のケアに関する課題はなんでしょうか?

今中:
幼児教育に関していえば、もっとたくましく育てていく必要があると思っています。

昔と比べて、今の子どもたちって外で遊べる環境とか機会が減っていると思うんですが、そうした「体験」や「経験」を得る機会をもっと増やすべきではないかな、と。

頭で色々なことを覚えても、それがリアルの場に繋がらなければ、本当の意味での「体験」や「経験」には繋がらないと思います。
リアルな場での「体験」や「経験」が子どもたちの血肉になり、広い視野の獲得や豊かな情操を持った人に育つことになると思うんです。

-そういう意味での「たくましさ」が、子どもの成長にとって大事なんですね。

今中紀子さん取材記事5

今中:
あとは、やっぱり自己肯定感を育むことです。

子どもの心が成長する過程で「がんばったらできた!」という成功体験や、できたことを周りの大人が褒めてあげることは、とても大切です。
それがその子自身の自信になり、自己肯定感に繋がるんです。

今って、日本の社会全体に自己肯定感が低いムードが漂ってると思うんです。
それに、子どもたちがストレスを受ける機会も、昔より増えてますよね。

そんなストレスが多い時代の中で生きていかなければならないからこそ、折れない心を育てる教育や、子どもたちのストレスをケアできる場所と環境を提供する必要性を感じています。

あるひとつの資格が入り口になって、人生の転機となることもある

最後に、幼児教育ひいてはチャイルドカウンセラーなど、子どもの心のケアに関する資格や仕事に興味のある方にメッセージをお願いします!

今中:
幼児教育もチャイルドカウンセリングも、人と関わる仕事です。

幼児教育に関しては、その子どもにとって「人生ではじめての先生」になる可能性も高いので、責任も重いです。
それだけにやりがいも大きい仕事です。

それから、資格の取得って、自分の興味関心や得意分野の入り口になることもあると思うんです。

たとえば保育士の資格を取ったからといって、必ずしも保育園で働かなければならないということはありません。
保育士の資格取得がきっかけで、「実は私って食育の分野に向いているのかも?」とか、「子供の心のケアを極めたいな」とか、自分の得意な路線を見つけられることもあると思います。

そんなふうに、ひとつの資格が入り口になって、そこから路線が枝分かれするようなイメージで、勉強の範囲を広げることもできますよね。

その広げた路線の中で、どう生きていくか? どうすれば自分の得意が活きるか?
それを見つけられれば、資格はきっと人生を後押ししてくれるものになると思いますよ。

幼児教育やチャイルドカウンセリングに関する資格を取得したい方は、いい先生との出会いが、子どもの自己肯定感に寄与することを忘れずに、これからの子どもたちを支えていきましょう。

今中紀子さん取材記事6

「自己肯定感」を持った子どもを育てるには、大人たちの心の安定感が不可欠

取材中に今中さんが仰ったように、今の時代は子どもたちよりも、大人たち自身が「自己肯定感」に対して何かしらのモヤモヤを抱えていたり、スッキリしないものを抱えている現状があるのではないでしょうか。

「子どもは、大人を見て育ちます。大人の影響を受けずに、子どもが育つことはありえません」

今中さんの言葉のとおり、折れない心を持ち、きちんと自己を肯定できる子どもを社会全体に増やし、ポジティブな社会と未来を作っていくには、まず今を生きる大人たちが、自分の心のあり方を見直す必要があるのではないか。

大人こそが、自分の心の状態と向き合い、心と適切な付き合いをしていくことが求められているのかもしれない。
そんなふうに感じた取材でした。

未来を紡いでいく子どもたちが、胸を張って堂々と生きられるような社会を作るには、大人の力が不可欠です。

今中さんのように、次世代の子どもの心を育ててみたい方は、まずは自分の得意な分野を探し、資格取得を目指して勉強してみることから始めてみてはいかがでしょうか?

ウーモアでは、チャイルドカウンセラーに関する資格講座を掲載中です。
今中さんのように、次世代の子どもたちを支える仕事をしたい方や、カウンセングの領域に興味がある方は資格講座を検索してみてくださいね。気になる資格講座の資料は【無料】でご送付します。
あなたがなりたい自分になれますように。

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