浴衣、振り袖、礼服など、着る機会は少なくても私たちにとって意外と身近な「着物」。
夏祭りで浴衣を着るときや、ちょっとしたお出かけ時のために、着付けが一人でできるようになれたらいいのに……。
着付けの技術を覚えて、晴れの舞台をお手伝いする仕事がしたい。
日本の伝統文化である着物について勉強してみたい!
など、今回は着付けに興味をお持ちの方に向けて、着付けに関する資格を紹介します。
目次
着付けの代表的な資格とは?

着付けの資格には、国家資格と民間資格の二種類があります。
国家資格は「着付け技能検定」のみですが、民間資格は認定団体もさまざま。着付け専門のスクールが認定元であることがほとんどです。
以下に、着付けの資格の一例を紹介しましょう。
資格名 | 特徴 | 認定スクール・協会 |
---|---|---|
着付け技能検定 | 着付けの資格として唯一の国家資格。1級、2級あり。くわしくは後述。 | 全日本着付け技能センター |
着付講師認定証 | 三級、二級、一級あり。認定スクールの「花 京都きもの学院」では「中等科」修了で三級、「高等科」修了で二級、「研究科」修了で一級を取得できる。 | 花 京都きもの学院 |
きもの講師 | 3級、2級、准1級、1級あり。准1級の取得で教室の開業が可能。1級では着装学を習得。対象の学科は「きもの着付科」。 | 長沼静 きもの学院 |
着付け師 | 3級、2級、1級あり。スキルアップしたいヘアメイクアップアーティストや美容師など、仕事に繋げたい人向けの資格。対象の学科は「着付師育成科」。 | 長沼静 きもの学院 |
着物着付指導士 | 三級、二級、一級あり。厚生労働省認定資格。「和装界のオピニオンリーダー(先駆者)」の育成がねらい。 | 全日本和装コンサルタント協会 |
着物文化検定 | 5級~1級あり。「きもの」そのもの、着物の「歴史と文化」を学び、「きもの文化」に対する深い理解を得られる資格。 | 一般社団法人全 日本きもの振興会 |
和装師 | 3級~1級あり。それより上は準師範、高等師範。1級から他装を学べ、インストラクターとして活動できるようになる。 | 一般社団法人 日本伝統技術インストラクター協会(JTTI) |
上記のように、各スクールの特色や資格のねらい、レベル別にできることも多種多様です。
そのため資格の取得を考えている方は、自分のニーズに合った資格講座を比較検討することが大切ですね。
この記事では、唯一の国家資格である着付けの資格の代表格「着付け技能検定」について、くわしく解説していきましょう。
着付け技能検定

着付け技能検定は、厚生労働大臣が指定する着付けの国家資格で、着付けに関する知識と技能を一定以上兼ね備えていることを証明します。
資格を取得するには、学科試験に合格後、実技試験に合格しなければなりません。
資格取得後は、「着付け技能士」と名乗ることができます。
受験料は1級の場合学科が8,900円、実技が18,500円です。
2級は学科が8,900円、実技が16,700円となっています。
着付け技能検定は、自分で着物を着る「自装」よりも、他の人に着物を着付ける「他装」に重きを置いている資格です。
そのため、実技試験では浴衣や訪問着、振り袖といった着付けを制限時間内に行うことで、他装のスキルをはかるような内容となっています。
等級別の特徴
着付け技能検定には、1級と2級のふたつの等級があります。
1級を受けるにせよ、2級を受けるにせよ、受検資格として実務経験が必要です。
2級を受検する場合は、2年の実務経験が必要です。
ただし、1級受検の場合は卒業した教育機関やすでに保有している資格によって、受検資格が細かく分かれており、少々複雑となっています。
そこで、以下に1級の学科試験の受験資格について表をまとめました。
1級の学科試験 受検資格
受検条件 | 必要な実務経験年数 |
---|---|
実務経験のみ | 5 |
専門学校卒業 | 4 |
大学・短大・高校専攻科卒業 | 3 |
美容師免許取得 | 2 |
2級合格者 | 1 |
次の表では、各教育機関の総修了時間によって受検資格が異なる場合を表しました。
受検条件 | 総修了時間 | 必要な実務経験年数 |
---|---|---|
専修学校又は各種学校卒業 | 800時間以上 | 4 |
同上 | 1600時間以上 | 3 |
同上 | 3200時間以上 | 2 |
短期課程の普通職業訓練修了 | 700時間以上 | 4 |
普通課程の普通職業訓練修了 | 2800時間未満 | 3 |
同上 | 2800時間以上 | 2 |
なお、受検条件として認められる学科は美容科、着付け科、和裁科、被服科など、着付けと関連性がある学科の卒業生もしくは修了生のみです。
実技試験 受検資格
実技試験の受検資格は、同級もしくは上位級の学科試験を合格した人に付与されます。
また、同級もしくは上位級の学科試験を免除される人も受検対象となります。
免除制度について
着付け技能検定には、一部の対象者の学科試験と実技試験受検を免除する制度があります。
免除の対象は、
・「技能検定関係」(同一検定職種のみ)
・「職業能力開発行政関係」(検定職種に関する訓練科あるいは免許職種のみ)
・「その他」
の3つの区分に分かれています。
技能検定関係
免除対象者 | 免除対象の範囲 |
---|---|
1級の学科試験合格者 | 1級・2級の学科試験 |
2級の学科試験合格者 | 2級の学科試験 |
職業能力開発行政関係
免除対象者 | 免除対象の範囲 |
---|---|
職業訓練指導員免許の取得者 | 1級・2級の学科試験 |
普通課程の普通職業訓練において、技能照査の合格者、かつ合格後2年の実務経験がある(訓練時間が2800時間以上の場合は1年の実務経験) | 2級の学科試験 |
着付け職種技能検定の問題作成業務に2年以上就いた者 | 1級・2級の学科試験と実技試験 |
着付け職種技能検定の実技採点に2年以上就いた者 | 1級・2級の実技試験 |
その他
免除対象者 | 免除対象の範囲 |
---|---|
協会が認めた検定合格者、教育講座・職業訓練修了者かつ協会による特例講習の修了者 | 1級・2級の学科試験 |
着付け師の仕事内容

着物の着付けを職業として行う人のことを「着付け師」といいます。
着付け師の主な仕事は、成人式や結婚式、七五三、卒業式といった晴れの舞台や、撮影、舞台で着る着物を着付けることです。着付け教室の講師として活躍している人もいます。
勤務先としては、写真スタジオ、結婚式場、レンタル着物店、着物の販売店があげられます。
和装スタイリストとして活躍したり、教室を開いたりすることも可能です。
着付け師になるのに資格は必要?
着付け師は、必ずしも資格の取得が必要な職業ではありません。
ただし、経験や知識を重視する就職先であれば、採用時に資格をアピールすることもできるでしょう。
一人前の着付け師になるには、着物に関する深い知識、TPOに合った着物選び、確かなスタイリングのセンスなどが必要です。
こういった知識と技能を身につけるにあたり、資格の取得が役に立つ可能性はあります。
また、美容師として働いている人が着付けに関する資格を取得するケースも珍しくありません。美容師としてスキルアップをはかりたい方、サロンのメニューに着付けを追加したい方などは、着物の資格を勉強してみるとよいかもしれませんね。
まとめ

着物の資格には国家資格と民間資格があることを紹介しました。
とくに民間資格は数も多いため、どの資格がよいのか迷ってしまうかもしれませんね。
資格を取得することで、着付けに関する技能をどのように役立てたいのか?
費用はどの程度捻出できそうか?
どのぐらいの学習期間であれば続けられそうなのか?
着付けのレベルアップをはかるならば、どのようなステップが踏めるスクールがよいのか?
など、まずは資格の取得に関連するトピックと、取得後の目標を洗い出してみてはいかがでしょうか。
自分に合ったスクールと資格を検討してみてくださいね。
参考サイト
全日本着付け技能センター「活動指針」(2018年8月6日,http://www.kitsuke.or.jp/guideline.html)
全日本着付け技能センター「手続きの流れ」(2018年8月6日,http://www.kitsuke.or.jp/flow.html)
全日本着付け技能センター「試験科目と範囲」(2018年8月6日,http://www.kitsuke.or.jp/subject.html)
全日本着付け技能センター「試験免除の基準について」(2018年8月6日,http://www.kitsuke.or.jp/exception.html)
Benesse マナビジョン「着付け師とは」(2018年8月7日, https://manabi.benesse.ne.jp/shokugaku/job/list/230/index.html)