「臨床発達心理士」とは、人の成長や加齢の過程で必要なサポートをする専門家です。
発達心理学をもとにした「発達的観点」を中心に、人の発達段階に合わせた支援や、支援が必要な人をサポートします。
そんな臨床発達心理士には、認定資格があります。しかし、その受験資格は5つもあるため、一見するとわかりにくいかもしれません。
そこで、5つの受験資格を簡単にまとめ、試験の情報などをわかりやすく説明します。
「臨床発達心理士」の仕事内容と活躍場所

乳幼児期・学齢期・青年期・高齢期と、それぞれの時期によって発達の悩みは異なるもの。
臨床発達心理士は、子どもや成人期、老年期の人など幅広い年齢層を対象に、発達心理学をベースに用いながら、人が発達に伴って抱える悩みや問題を査定し、解決へ導きます。
例えば、育児不安・虐待・不登校・引きこもりといった問題を支援します。
自閉症・知的障害・学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)をもつ人をサポートするのも、臨床発達心理士の役割です。
子どもだけではなく、成人も支援の対象になっていることや、当事者の家族や地域への広がりも視野に入れる必要があるため、クリニックや保育園、社会福祉施設など、その活動場所は非常に多岐にわたります。
一例として、発達段階別に活躍が期待できる職場を挙げてみました。
乳幼児期
保健所・保育園・幼稚園・子育て支援センター・通園施設・リハビリセンター・児童相談所など
学齢期
特別支援学校・学童保育・特別支援学級・適応指導教室など
成人、老年期
障害者施設・作業所・老人ホーム・老人保健施設・老人病院など
生涯発達
母子生活支援施設・発達クリニック・障害者職業センターなど
臨床発達心理士になるには資格が必要!

臨床発達心理士になるには、資格の取得が必要です。
資格を取得すると、子育て支援や特別支援教育などを行う技能が証明され、前述したような場所で活躍できます。
ちなみに、資格は5年ごとに更新が必須となります。
資格を更新するには、「資格更新研修会」に出席します。
定期的に学び直せる機会があり、技能を一定のレベルに保ち続けられる点が資格取得のメリットでしょう。
臨床発達心理士の受験資格は5つに分かれる
臨床発達心理士の資格を取得するには、受験資格を満たしたうえで資格試験に合格する必要があります。
しかし、受験資格の基準は複数あり、自分の経歴や経験によってルートや試験の内容が異なります。
受験資格は主に以下の5つに分かれています。
タイプⅠ(院修了タイプ)
発達心理学隣接諸科学の大学院修士課程の学生、または修了後3年未満
タイプⅡ-1(現職者院修了タイプ)
臨床経験が3年以上あり、現職者である。かつ、発達心理学隣接諸科学の大学院を修了している
タイプⅡ-2(現職者学部卒タイプ)
臨床経験が3年以上あり、現職者である。そのうえで、発達心理学隣接諸科学の学部(4年制)を卒業している
タイプⅢ(研究者タイプ)
大学や研究機関で5年以上研究職に勤務している
タイプⅣ(心理師タイプ)
公認心理師資格(臨床心理分野の国家資格)を取得している
上記のいずれにも該当しない場合は、「指定科目取得講習会」を受講して単位を取得する必要があります。
講習会では、1年間で最大3科目の受講と12単位の取得ができます。
ひとつの指定科目に必要な単位数は4単位で、4日間連続で講習会を受けると取得が可能です。
指定科目の一覧
発達心理学隣接諸科学にあたる「指定科目」は、以下のとおりです。
臨床発達心理学の基礎に関する科目
臨床発達支援の専門性に関する科目
認知発達とその支援に関する科目
社会・情動の発達とその支援に関する科目
言語発達とその支援に関する科目
◆引用元:旧)臨床発達-認定申請ガイド表2-3
また、大学院で発達心理学隣接諸科学を専攻していなくても、下記の科目を専攻している場合、指定科目として認められます。
ただし、下記の科目の履修が指定科目の修了として認められるには「教育職員免許状専修」をもっているか、医学部・薬学部・歯学部など、6年制の大学の学部を卒業していることが条件です。
発達心理学 | 心理学 | 教育学 |
保育学 | 児童学 | 福祉学 |
老年学 | 医学 | リハビリテーション学 |
保健体育学 | 体育心理学 | スポーツ健康科学 |
心理学的コミュニケーション学 | 人間社会学 | 社会学 |
障害児教育学 | 幼児教育学 | 社会福祉学 |
小児科学 | 看護学 | 発達障害学 |
人間学 | 応用人間科学 |
「教育職員免許状1種(1級)」を所持しているか、日本心理学会が認定する「日本心理学会認定心理士」を取得している場合も「発達心理学隣接諸科学学部(4年制)卒業」扱いになります。
この場合も、指定科目を履修したことが認められるケースです。
しかし、以下のケースでは上記を含む発達心理学隣接諸科学にあたる専攻をしても、4年制の学部を卒業したことにはなりません。
・3年制の短大卒業+1年制の専門学校卒業
・2年制の専門学校卒業+2年制の短大卒業
・3年制の専門学校あるいは短大を卒業+大学で一定の科目の単位取得
試験の概要

試験は原則年に1回実施され、1次審査・2次審査にクリアする必要があります。
試験に申し込むには、「申請ガイド」を購入し、書類を送付します。
申請ガイドには資格制度の概要や試験のポイントが載っており、氏名や住所などを記入する「資格認定申請書」、履歴書なども含まれています。
申請ガイドの料金は、一冊2,310円(税込)です。
1次審査
1次審査は申請者全員が受ける必要があります。
1次審査の内容は、上記の受験資格のタイプによって以下のように審査内容が異なりますので注意してください。
- 1次審査 内容
-
□ タイプⅠ
書類審査・筆記試験・臨床実習内容報告書審査
□ タイプⅡ
書類審査・筆記試験または事例報告書審査
□ タイプⅢ
書類審査・業績審査
筆記試験は二部構成になっており、多肢選択式のパートと論述のパートに分かれています。
- 試験Ⅰ(多肢選択式)
-
□ 「心理学と発達心理学の基礎」
□ 「認知発達とその支援」
□ 「社会・情動の発達とその支援」
□ 「言語発達とその支援」
□ 「育児・保育現場での発達とその支援」
□ 「臨床発達心理学の基礎」
- 試験Ⅱ(論述式)
- □ 「臨床発達心理学の基礎に関する論述」
試験対策としては、申請ガイドに記載されている出題基準や指定科目キーワード、前年度の得点割合、問題例をチェックしましょう。
指定科目の基準に基づいたテキストも参考になります。
2次審査
2次審査は口頭試験です。
試験時間は20分程度で、臨床発達心理士としての資質を問われます。
2次審査に合格すると「合格通知」が届き、所定の手続きを行った後から5年間、臨床発達心理士として資格が認定されます。
ちなみに受験に必要な「臨床経験」ですが、自分の経験が受験資格に値するのか、問い合わせることはできません。
臨床発達心理士にふさわしい経験を有するかどうかは、申請書類と2次審査によって判断されます。
資格の更新について
前述したように、臨床発達心理士の資格は5年ごとに更新する必要があります。
研修会に参加して、5年間に「更新ポイント」を12ポイント以上取得しなければなりません。
このため、臨床発達心理士には定期的な知識のブラッシュアップや研鑽が不可欠といえるでしょう。
さらに、臨床経験が5年以上で、十分な経験と実績があれば、臨床発達心理士を目指す人や臨床発達心理士になった人を支援する「臨床発達心理士スーパーバイザー」という指導的な役割を担うこともできます。
臨床発達心理士としてステップアップするひとつの基準にしてみてもよいかもしれませんね。
まとめ

臨床発達心理士の受験資格や試験内容について概要をまとめました。
生まれつきのハンディキャップや困難を抱える人の力になりたい人や、心理学の勉強に興味がある人は、臨床発達心理士の資格を取得してみてはいかがでしょうか。
参考サイト
臨床発達心理士認定運営機構「臨床発達心理士とは」(2018年9月12日, https://www.jocdp.jp/about/summary/)
臨床発達心理士認定運営機構「申請条件」(2018年9月12日, https://www.jocdp.jp/license/conditions/)
臨床発達心理士認定運営機構「資格取得までの流れ」(2018年9月12日, https://www.jocdp.jp/license/flow/)
臨床発達心理士認定運営機構「よくあるご質問」(2018年9月12日, https://www.jocdp.jp/other/faq/)
臨床発達心理士認定運営機構「活躍の場」(2018年9月12日, https://www.jocdp.jp/about/playing-field/)
臨床発達心理士認定運営機構「指定科目基準/指定科目取得講習会/指定科目認定大学院」(2018年9月12日, https://www.jocdp.jp/license/designated-subjects/)