厚生労働省は2009年にひきこもり対策推進事業を開始し、ひきこもり問題と関係する不登校問題に対する取り組みも行っています。不登校生が在籍する学校は、中学・高校では8割以上にものぼり、彼らの支援には専門知識が必要です。
その役割を担う存在として期待されているのが不登校訪問専門員。不登校の児童や生徒、その家族を第三者としてサポートしていくための資格・仕事です。今回は、不登校訪問専門員の資格取得の方法や仕事内容などについてご紹介します。
不登校訪問専門員とは
「不登校訪問専門員」の資格は、社会問題化している不登校の問題に対応するために、一般社団法人ひきこもり支援相談士認定協議会が設けた、民間の認定資格です。
内閣府が公表する「子ども・若者白書」によると、1900年代に増えた不登校児童や生徒は2000年代に入るとほぼ横ばいとなっています。2012年の調査では、不登校の子どもが在籍している小学校では42.7%と半数以下ですが、中学校では84.5%、高校では82.2%と8割にものぼります。不登校は、日本の多くの地域に共通した問題なのです。
不登校訪問専門員に求められること
不登校の原因は、無気力や情緒的な混乱など発達の過程が影響しているケースをはじめ、いじめや家庭環境の問題、非行によるものなどさまざまです。学習障がい(LD)や注意欠陥多動性障がい(ADHD)、広汎性発達障がい(PDD)、アスペルガー症候群といった発達障がいが原因のケースもあります。
不登校訪問専門員の資格認定元である一般社団法人ひきこもり支援相談士認定協議会は、不登校訪問専門員に求めること、養成の目的として以下のことをあげています。
・不登校当事者(ご本人・ご家族)に第三者の立場で接し、学校・社会復帰を目指し、支援を行う。
・不登校状態から完全な学校・社会復帰を目指すには、第三者の支援が必要であり、訪問支援を中心とした支援活動により、時には復帰への一歩となる中間施設(グループホーム、フリースペースなど)へ繋ぎ、段階を踏みながら、家から学校・社会へと場を移し、希望ある将来を描けるような支援活動を行う。
・不登校問題特有の問題性の理解を深め、正しい知識を持って、正しい対応をしていく。
・平成20年3月に文部科学省より「特別支援教育」について、平成22年5月には厚生労働省より「ひきこもり」についてガイドラインが発表され、不登校とひきこもり問題との密接な関係性や障害性に関する相談・支援のあり方が打ち出され、ますます支援活動の重要性が広まっています。
◆引用元:一般社団法人ひきこもり支援相談士認定協議会「不登校訪問専門員とは?」
不登校の問題の解決として、就学や就労などの社会復帰を目指すには、本人と家族に対して、原因に応じたサポートを行う第三者が必要なケースが多いです。不登校訪問専門員は、不登校の問題を正しく認識し、専門的な知識に基づいた適切な対応を行うことが求められます。
不登校訪問専門員の具体的な活動
不登校訪問専門員は、不登校の当事者とその家族への訪問によるサポートを中心に活動します。グループホームやフリースクールといった中間施設へとつないで、家から社会へと段階的に関わりを持てるように支援していきます。
また、不登校に対して社会的に正しい知識を持ってもらうように、不登校の問題に関連するセミナーや講演会の開催などの啓蒙活動を行うこともあります。不登校訪問専門員の活動内容を、一般社団法人ひきこもり支援相談士認定協議会は以下のようにまとめています。
・ご相談又はご紹介を受けた不登校当事者ご本人・ご家族に対し、訪問支援を中心とした支援活動を実施し、不登校問題の解決に向けた活動を行う。
・教育関連会社と連携し、不登校状態にある子ども達に対して、訪問支援を行い、障害性を考慮した正しい対応を心がけ、支援活動を行う。
・全国各地にて開催する研修会・講習会への参加により更なる知識・手法の習得
・不登校・ひきこもり問題に関する個々特有の問題性について、正しい対応、正しい理解を深めるため、講演会やセミナーを開催し、広く啓蒙活動を行う。
ひきこもり問題により広く深く対処するために、「ひきこもり支援相談士」の資格と併せて取得する人もみられます。「ひきこもり支援相談士」の資格・仕事については下記の記事をご覧ください。
不登校訪問専門員の資格を取得するにはヒューマンアカデミーたのまなの講座がオススメ
不登校訪問専門員を目指すにはどのような方法があるのでしょうか。不登校訪問専門員は、学歴や年齢など資格取得に関する要件はなく、不登校問題に関心のある人なら、誰でも受講や資格取得が可能です。
ここでは、ヒューマンアカデミーたのまなの「不登校訪問専門員養成講座」を紹介しましょう。
- 不登校訪問専門員養成講座
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□ 受講条件:とくになし
□ 受講費用:35,000円(税込)
□ 標準学習時間:学習期間 3ヶ月
在籍期間 3ヶ月
□ 教材:
1. 講義DVD 2枚
2. テキスト 1冊
3. 副教材 1冊
4. 問題集 1冊
5. 学習の手引き 1冊
□ 通学スタイル:通信
□ 取得できる資格名:不登校訪問専門員
使用する教材は、不登校経験者、教師、医師らの生の声を基に制作したものとなっています。
不登校の問題への理解を深めた後に、不登校の原因となりうる発達障がいなどについて学習します。不登校の当事者への対処方法やカウンセリング手法などの知識も身につけ、実際に不登校訪問専門員としての仕事で参考となる訪問支援の実例についても把握していきます。
講座のすべての内容の学習を終えた後にレポートを提出し、合格すると、一般社団法人ひきこもり支援相談士認定協議会より不登校訪問専門員の認定証が発行されます。
「不登校訪問専門員」ほか、教育・福祉分野で求められる資格講座の詳細が確認でき、無料で資料請求もできます。
不登校訪問専門員の資格を活かせる仕事
不登校訪問専門員の資格を活かす場は多岐に渡りますので、仕事内容はさまざまです。不登校訪問専門員の資格を活かしやすい仕事をあげていきます。
不登校専門の家庭教師
不登校の児童や生徒が復学までの期間に学ぶ場として、一部の家庭教師派遣の会社では、専門のコースを設けています。学業の遅れは復学を難しくし、就業を目指す際にもネックとなることが多いです。
こうした専門のコースで、不登校の子供を担当する家庭教師は、学習面だけではなく、精神面のフォローや生活に関する指導までを担当することがあります。
家庭教師としての一般的なスキルに加えて、不登校訪問専門員の資格の取得することで、不登校の子供に対応する家庭教師として働くことが可能です。
学校教員として不登校問題に対応
学校の教師が不登校問題に関する専門知識を身につけて、適切な対処方法を学ぶために資格を取得するケースもあります。民生児童委員や社会福祉士なども、不登校問題を扱う場面では、不登校訪問専門員としての専門知識を活かせます。
不登校専門のカウンセラー
すでに臨床心理士や他の民間資格をもとにカウンセラーとして働いている人は、不登校訪問専門員の資格取得によって専門性を高め、不登校を専門に扱うカウンセリングセンターで働くことも可能です。
不登校専門のカウンセラーとして、独立開業する道もあります。
不登校問題のボランティア活動
不登校訪問専門員の資格を取得することで、地域の不登校問題への取り組みに貢献することもできます。
不登校に悩む家族を対象とした地域での無料相談会など、ボランティア活動にも活かせます。
不登校訪問専門員の収入
不登校訪問専門員の資格を取得している人は、どのくらいの収入を得ているのでしょうか。代表的な2者を例にとってみてみましょう。
不登校問題を扱うカウンセラー
不登校を扱うカウンセラーとして民間企業で働く場合には、月収25万円~40万円、年収で300万円~600万円程度が目安です。
ただし、不登校訪問専門員の資格だけではカウンセラーとして仕事を得ることは難しく、臨床心理士をはじめとした、ほかの心理・カウンセリング関連の資格と実務経験が求められる場合が多いでしょう。
不登校の子供専門の家庭教師
家庭教師は指導実績によって収入に差があり、登録制で就業に応じた時給制の給与体系が一般的です。
年収200万円台が平均的といわれていますが、500万円以上の収入を得ている人もいます。
不登校を扱うコースは、一般的なコースよりも家庭教師費用が高めであることから、平均以上の年収が得られることが推測できます。不登校訪問専門員の家庭教師としての就業も、家庭教師として必要な学力や知識があることが前提の年収です。
まとめ
不登校訪問専門員の資格と仕事についてご紹介しました。
不登校の児童や生徒は地域に関わらず存在します。
不登校で学生時代を過ごした方は社会に出るタイミングを失い、大人になってさらに深刻な「ひきこもり」状態になる場合も…。
「ひきこもり」当事者や親世代の高齢化もまた、社会問題になっています。
今まで保育・教育・福祉分野で働いてきた方や、育児経験を活かして青少年と関わる仕事をしたいと思う方は、資格取得を目指してみませんか?「もっと誰かの役に立ちたい」という気持ちを応援します!
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参考サイト
ひきこもり支援相談士認定協議会「不登校訪問専門員とは?」(2017年7月19日, http://www.khj-hsc.org/about_02.html)
通信敎育・通信講座のたのまな「不登校訪問専門員養成講座」(2017年7月19日,http://www.tanomana.com/SHOP/1125T247.html)
家庭教師なら学研の家庭教師「不登校コース」(2017年7月19日,http://www.kame.co.jp/course/truancy/)
不登校カウンセリングセンター「採用情報」(2017年7月19日,http://www.futoukou.jp/recruit/index.html)
内閣府「第1節 敎育 平成26年版 子ども・若者白書(全体版)」(2017年7月19日,http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26honpen/b1_03_01.html)