「キャリアコンサルタント」は、厚生労働大臣の認可を受け、2016年に新設された注目の国家資格です。
資格を取得すると、クライアントのキャリア形成や職業能力開発に関するアドバイスを行う「キャリアコンサルティング」の技能が証明されます。
就職活動のときに行う「自己分析」をサポートするなど、クライアントの職業選択や自己理解を助けることが、キャリアコンサルタントの役割です。
キャリアコンサルタントになるには、国家試験に合格する必要がありますが、その試験はふたつの団体が主催しています。
しかし、このふたつの団体で合格率が異なるということを知っていますか?
この記事では、主催のふたつの団体の合格率を紐解きながら、難易度や合格のための勉強方法などもあわせて解説します!
目次
キャリアコンサルタントの主催団体は2つ
キャリアコンサルタントの国家試験は、以下のふたつの団体が主催しています。
・JCDA(日本キャリア開発協会)
・キャリア・コンサルティング協議会
「学科試験」については両団体ともに共通です。
しかし、クライアント役の人と演じるロールプレイング、面接、そして論述が問われる「実技試験」の内容は団体によって異なります。
しかも、その実技試験の内容だけでなく、合格率も異なるのです。
キャリアコンサルタント試験の合格率

団体別に、キャリアコンサルタントの試験の合格率を過去3回の実施を参考としてまとめました。
試験回数 | JCDA(日本キャリア開発協会) | キャリア・コンサルティング協議会 |
---|---|---|
第9回 | 学科試験:32.1% 実技試験:67.9% |
学科試験:28.8% 実技試験:67.8% |
第8回 | 学科試験:59.9% 実技試験:71.9% |
学科試験:66.5% 実技試験:67.5% |
第7回 | 学科試験:54.8% 実技試験:74.6% |
学科試験:53.6% 実技試験:70.0% |
◆参考:国家資格 キャリアコンサルタント試験「試験結果」
◆参考:CC協議会 キャリアコンサルタント試験「合格発表」
厚生労働省は、両団体の試験結果を合わせた合格率を発表しています。
試験回数 | 厚生労働省による合格率 |
---|---|
第9回 | 学科試験:32.1% 実技試験:67.9% |
第8回 | 学科試験:59.9% 実技試験:71.9% |
第7回 | 学科試験:54.3% 実技試験:72.7% |
直近の第9回開催では、学科試験の合格率は30%前後。
実技試験の方は、60%前後で推移しています。
実技試験を受けるには学科試験の合格が必須ですので、まずは学科試験で問われる知識をしっかりとカバーすることが不可欠です。
2大団体を徹底比較!合格のカギは「面接」の採点基準にアリ?
JCDAもキャリア・コンサルティング協議会も学科試験の問題は共通しており、試験の実施日も同じです。
学科試験の合格の基準も同一で、70%以上の正答率を得る必要があります。
実施日や出題内容が異なるのは、実技試験です。
JCDAもキャリア・コンサルティング協議会も、論述では40%以上の正答率を得ることを合格の基準としています。
合格の基準が大きく異なる点は、実技試験の中の面接にあります。
面接の科目は、「ロールプレイ」と「口頭試問」です。
ロールプレイでは、15分間でクライアント役にキャリアコンサルティングを行います。キャリアコンサルタントにふさわしい回答や応対が不可欠です。
口頭試問の内容は、面接官との質疑応答です。
JCDAでは、面接の合格の基準は以下のとおりです。
(中略)論述試験の満点の40%以上、面接試験の評価区分の中の「主訴・問題の把握」「具体的展開」「傾聴」のいずれにおいても満点の40%以上の得点が必要
◆引用元:国家資格 キャリアコンサルタント試験「試験要項 – 受験案内」
キャリア・コンサルティング協議会の方は、以下を合格の基準としています。
(中略)論述は配点の40%以上の得点、かつ面接は評価区分「態度」「展開」「自己評価」ごとに満点の40%以上の得点が必要
◆引用元:CC協議会 キャリアコンサルタント試験「受験案内」
このように、キャリアコンサルタントの試験に合格できるか否かは、面接の評価基準が重要なカギとなるようです。
そのため、「どちらの団体の実技試験を受けたら自分の得意分野で勝負できるか?」といったポイントを念頭に受験先を検討してみてください。
キャリアコンサルタントの試験に受かる!合格のコツ

受験する団体を決めたら、いよいよ試験の勉強です。
一人での学習では不安がある人は通信講座や通学講座を使って対策するのも手ですが、独学で取得を目指すこともできます。
そこで、独学でキャリアコンサルタントの試験に合格するコツを紹介しましょう。
学科試験は「過去問」「参考書」が勉強のポイント
学科試験に合格するには、以下の勉強方法が考えられます。
①過去問を解く
②参考書を使う
過去問をひたすら問いて練習することは、王道の勉強方法ともいえます。
直近の過去問はJCDA、キャリア・コンサルティング協議会の公式サイトに掲載されているので、チェックしておきましょう。
なお、2018年10月時点で、キャリアコンサルタントの国家試験に対応した過去問題集は発売されていません。
そのため、純粋に学科試験の過去問のみを繰り返し練習したい場合は、いずれかのサイトを参考にしてみてくださいね。
◆参考:JCDA過去問
◆参考:キャリア・コンサルティング協議会過去問
また、問題集を使って本番の試験をイメージしたり、問題に慣れたりすることも勉強のカギとなります。
一例として、こちらの問題集を紹介します。
『国家資格キャリアコンサルタント 学科試験 予想問題集 第2版』(東京リーガルマインド LEC総合研究所 キャリアコンサルタント試験部,2018年)
学科試験に出題される可能性が高い領域を中心に編成された予想問題集です。
第4回の実施以降、試験が「全体的に難問化」したことを受け、基礎的な知識のほかに時事問題にも対応できるような問題を集めています。
基礎と応用、両方の知識をしっかりおさえたい人にオススメの一冊です。
国家資格キャリアコンサルタント 学科試験 予想問題集 第2版
論述と面接の対策は?実技試験を勉強するポイント
前述したように、キャリアコンサルタントの試験は団体によって実技試験の出題内容が異なります。
そこで、どちらの団体の実技試験にも通用する勉強方法を4つ紹介しましょう。
①面接は人と練習する
先に引用したように、主催団体による合格基準の大きな違いは、面接にあります。
JCDA、キャリア・コンサルティング協議会は、以下のように合格基準を設定しています。
・JCDA……「主訴・問題の把握」「具体的展開」「傾聴」
・キャリア・コンサルティング協議会……「態度」「展開」「自己評価」
このように、面接で評価されるポイントが異なるため、面接試験の結果が合格の分かれ目になる可能性が高いでしょう。
どちらの団体を受験すれば自分の得意なフィールドで勝負できるか、見極めることが肝心です。
そして、対面で行う面接はいざ本番となると緊張してしまうもの。
誰かと一緒に練習して、少しでも本番に対するイメージを固めておくことが望ましいでしょう。
合格者のなかには、受験が終わった人に練習を依頼した人もいるようです。
できれば練習をお願いする人は、キャリアコンサルタントの知識がある人がよいですね。
②勉強会・セミナーに参加する
受験者同士で「勉強会」を開いたり、「セミナー」が開催されることもあります。
こういった場所を利用して、論述、ロールプレイングや口頭試問の練習を重ねる人もいるようです。
勉強会やセミナーの情報は、FacebookやTwitterなどのSNSで検索するとチェックできます。
キャリアコンサルティングの情報をまとめているブログで、イベントを告知していることもあります。
また、「キャリアコンサルティング 勉強会」でインターネット検索するのもひとつの手です。イベント告知型のサイトが出てきますので、お住まいの地域での開催状況を確認してみてください。
フィードバックをし合ったり、知識を持ち合ったりなど、志を同じくする人たちと一緒に勉強すれば、独学で抱えがちな孤独感や「本当にこの勉強方法でいいのかな?」といった不安を解消できる可能性もあります。
「養成講座に申し込むことは考えていないけれど、誰かと知識を確認し合いたい」という人は、勉強会やセミナーであれば、気軽に参加できるかもしれません。
③特定分野の講座に申し込む
また、一部の勉強を養成講座で補うのも手段です。
養成講座を提供するスクールのなかには、「面接対策のみ」「論述対策のみ」など、実技試験の一部に特化した講座を受けられるところもあります。
「ロールプレイングは講座で勉強し、論述は独学で習得する」といったふうに、勉強方法を使い分けることも可能です。
④論述は何度も書く練習をする
論述対策に関しては、何度も書いて練習することがキモです。
論述のパートは、制限時間が50分。つまり、50分で序論・本論・結論を書き上げ、回答が成立するように仕上げる必要があります。
時間切れになってしまったり、結論がまとまらなかったりなどのトラブルが起こる可能性もありますので、論述はとにかく実践練習を重ねることがコツです。
論述の過去問題は、前述したように団体の公式サイトから確認できます。
実際に50分でタイマーを切って書き、制限時間内で書くコントロールができるように対策を立てましょう。
まとめ

キャリアコンサルティングの試験は、JCDAとキャリアコンサルティング協議会のふたつの団体が主催しています。
主催団体によって学科試験、実技試験の難易度が異なるのも特徴です。
合格の分かれ道となるポイントは、面接試験に合格すること。
「どちらの団体の合格基準の方が、得意分野で勝負できそうか?」
この点を意識して、受験団体を選んでみてください。
独学での学習に自信がない人は養成講座を使う方法もありますので、検討してみてくださいね。
参考サイト
厚生労働省「キャリアコンサルタントになりたい方へ」(2018年10月11日,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/career_consultant01.html)
日本マンパワー「【 速報 】 第7回キャリアコンサルタント試験結果」(2018年10月11日,https://www.nipponmanpower.co.jp/cc/tps_details/TPFJK2XR/)
国家資格 キャリアコンサルタント試験「国家資格 キャリアコンサルタント試験 公式ウェブサイト」(2018年10月11日,https://www.jcda-careerex.org/)
CC協議会 キャリアコンサルタント試験「キャリアコンサルタント試験とは」(2018年10月11日,https://www.career-shiken.org/license.html)