「ケアマネジャー(介護支援専門員)」は、介護サービスの利用者と提供者の調整的な役割を担う、介護の専門職および公的資格です。
ケアマネジャーとして活躍するには、「介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)」を受験する必要があります。
しかし、ケアマネ試験に必要な受験資格は、平成30年度(2018年)に大幅に改正されました。その結果、受験資格をパスすることが厳しくなったといえます。
そこで、この記事では平成29年度(2017年)までの受験資格から「どこが変わったのか?」「なぜ変わったのか?」など、受験資格の変更点や試験のポイントを徹底解説します!
目次
ケアマネジャーは介護の利用者に最適な「ケアプラン」を作成する仕事

「ケアマネジャー」の正式名称は「介護支援専門員」です。
ケアマネジャーの仕事内容は、要介護者やその家族にとって最適なケアプランを作成すること。
利用を希望する人の心身に寄り添ったケアプランを考え、提案します。
そのため、介護利用者との面談・相談が欠かせません。
また、介護サービスの利用者とサービス提供者との調整も業務内容のひとつです。
職場としては、以下の場所が挙げられます。
・居宅介護支援事業所(在宅介護支援センターなどの併設事業所、独立事業所など)
・地域包括支援センター
・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
◆参考:中央法規出版「ケアマネジャーとは? | 資格試験対策書」
ケアマネジャーになるには試験合格が必須
ケアマネジャーになるには、国が定めた受験資格をクリアし、「ケアマネジャー試験(介護支援専門員実務者研修受講試験)」に合格する必要があります。
ココが変わった!受験資格の変更点

ケアマネジャーの資格は、「介護保険法」に基づいて施行されています。
その介護保険法が改正されたことで、ケアマネジャー試験の受験資格は、平成30年度に一部変更されました。
大きな変更点は、平成29年度までは受験資格として認められていた条件が一部廃止となったことです。
いったいどこが変わったのでしょうか?
まずは、従来の受験資格と現行の受験資格を比較してみます。
(A)平成29年度までの受験資格
①国家資格(※1)保有者
②国家資格に基づく業務に通算5年以上・900日以上従事した者
③相談支援業務に通算5年以上・900日以上従事した者
④社会福祉主事任用資格保有者
⑤介護等の業務に通算10年以上・1800日以上従事した者
(B)平成30年度以降の受験資格
①国家資格保有および資格に基づく業務に通算5年以上・900日以上従事した者
②「実務経験」として、下記の相談援助業務に通算5年以上・900日以上従事した者
・生活相談員
・支援相談員
・相談支援専門員
・主任相談専門員
医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作 業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語 聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士(管理栄養士を含む。)又は精神保健福祉士
受験資格とみなされる国家資格は、(A)・(B)ともに変わりません。
なお、(B)の②に該当する「実務経験」を証明するには、「実務経験証明書」の提出が必須です。
平成29年度までの受験資格が平成30年度以降一部廃止に!

改正によって変更となったポイントは、大きくわけてふたつあります。
①一部受験資格が廃止されたこと
・社会福祉主事任用資格保有者
・介護等の業務に通算10年以上・1800日以上従事した者
②受験資格の統合により、受験資格の適用範囲が狭まったこと
(平成29年度まで)
・国家資格(※1)保有者
・家資格に基づく業務に通算5年以上・900日以上従事した者
↓
(平成30年度から)
・国家資格保有および資格に基づく業務に通算5年以上・900日以上従事した者
このことから考えられるのは、平成30年度以降、ケアマネ試験の受験資格そのものの難易度が高くなったといえることです。
受験にあたり、求められる知識や経験の水準が厳しくなったといえるでしょう。
受験資格はなぜ改正された?背景にはケアマネジャーの資質向上を目指す目的が
平成25年、『介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会』という資料が厚生労働省から発表されました。
この資料を見ると、ケアマネジャーの資質向上のために、ケアマネ試験のあり方を見直す検討が行われたことが分かります。
介護支援専門員に係る様々な課題が指摘されている中で、今後、介護支援 専門員に求められる資質や、介護支援専門員の専門性の向上を図っていくこ とが必要である。
◆引用元:厚生労働省「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会における議論の中間的な整理」
厚生労働省によれば、要介護発生率が高くなるとされる75歳以上の高齢者の割合は、今後高くなると見込まれています。
同省は、それに伴ってケアマネジャーの質の向上に対する期待も大きくなることも推測しています。
しかし、現状のケアマネジャーの資質と、それを支える体制について、以下のような課題が浮き彫りになりました。
・介護保険の理念とされる「自立支援」の考え方の共有が不十分
・「アセスメント(課題把握)」が不十分
・ケアマネジメントに必要な「モニタリング」や評価が不十分
・「重度者」に必要な「医療サービス」の組み込みなど、医療分野との連携が不十分
・施設におけるケアマネジャーの役割が不明確 など
◆参考:厚生労働省「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会における議論の中間的な整理 」
ケアマネジャー試験の受験資格の見直しは、こうした課題の改善策の一環として検討されたといえるでしょう。
受験資格改正の背景にあった目的は、ケアマネジャーの質の向上やケアマネジメントそのものの見直しにあったと考えられるのです。
ケアマネジャーの資格を取得するまでの流れ

ここで、ケアマネジャーの資格取得までの流れを押さえておきましょう。
受験資格をクリアし、試験に合格した後は、各都道府県で実施される「介護支援専門員実務研修(計87時間以上)」を修了する必要があります。
その後「介護支援専門員資格登録簿」に登録申請し、受理されるとケアマネジャーの技能が認定される流れです。
登録の際は、住民票の登録地あるいは勤務先がある都道府県に申請しましょう。
また、資格の有効期間は5年です。
取得から5年以内に、更新に必要な研修の受講と更新申請を行う必要があります。
ケアマネ試験の概要
ケアマネ試験は、年1回の実施です。
試験内容は全国一律のため、都道府県による出題の違いはありません。
また、「点字受験者」や「弱視等受験者」にも対応しています。
試験形式は、五肢選択式です。
試験時間は120分。
出題に関しては、以下の内容が問われます。
- ケアマネ試験 出題内容
-
□ 介護支援分野(25問)
□ 保険医療サービス分野(35問)
計60問
「解答免除」は平成27年度(2015年)に廃止
ケアマネジャーの受験資格が厳しくなったことは前述してきたとおりですが、試験体制そのものも厳しくなりました。
というのも、2015年までは「医師」や「介護福祉士」、「薬剤師」など、受験資格として認定されている国家資格を保有していれば、一部の科目受験が免除となる「解答免除」が施行されていたのです。
しかし、厚生労働省はこの解答免除の制度も改めて見直す必要があるとし、平成27年度(2015年)解答免除は廃止となりました。
解答免除の廃止の背景にも「ケアマネジャーの資質向上」を目指す考えがあったと推察できます。
◆参考:厚生労働省「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会における議論の中間的な整理」
通信講座・通学講座でケアマネジャーの資格を取る!

受験資格をクリアしたら、さっそく試験対策です。
ケアマネジャー試験の合格率は15~20%前後と狭き門。
通信講座や通学講座を利用して、しっかりと試験勉強を進めるのが一般的です。
そこで、通信講座・通学講座、それぞれの特徴やメリットなどを解説します。
通信講座は忙しい介護職員にうってつけ! テキスト以外のサポートも豊富
ケアマネ試験の勉強対策として通信講座を使う場合、考えられるメリットはスケジュールを自分で調整できる点です。そのため、忙しい現役の介護職員にオススメ。
時間の合間を縫ったり、外出先で少し勉強したり、マイペースに学習を進めたい人は通信講座と相性がよいかもしれません。
通信講座といっても、送られてくるテキストでの学習以外の方法も充実しています。
専門講師による添削課題や受講生専用のオンラインサービスが受けられるなど、豊富な受験サポートが通信講座の魅力です。
自分のペースで学びつつ、補助的なサポートも得たい人は、通信講座を使ってみてはいかがでしょうか。
以下に、ウーモアで掲載中の講座を一部紹介します。
- ヒューマンアカデミーたのまな 通信講座概要
-
□ 受講費用:33,000円(税込)入学金 なし
□ 受講期間:6ヶ月
□ 教材:テキスト2冊、DVD5枚
□ 模擬試験:2回
- 資格の大原 通信講座概要
-
□ 受講費用:68,000円(税込)入学金 6,000円(税込)
□ 受講期間:4ヶ月
□ 教材:「講義レジュメ」
□ 模擬試験:2回
通学講座なら試験のポイントや最新情報も講師からゲットできる!
経験豊富な講師の講義をその場で受講でき、わからない点もリアルタイムで質問できるところが、通学講座の魅力です。
介護現場の現状や最新の情報、実際の業務など、テキストだけでは知ることが難しい情報や細かい試験のポイントなども聞けるでしょう。
一人での学習に不安を覚える人にも、通学講座はオススメです。
仲間を作ることで情報を共有し合い、講義でわからなかったポイントを教え合うなど、誰かと助け合いながら勉強することも可能です。
一例として、ウーモアに掲載中の通学講座をチェックしてみてください。
- 資格の大原 通学講座概要
-
□ 受講費用:68,000円(税込)
入学金 6,000円(税込)
□ 受講期間:3~4ヶ月
□ 教材:「講義レジュメ」
□ 模擬試験:2回
□ 学習形態:「教室通学」あるいは「映像通学」
まとめ

受験資格の難易度が高くなったケアマネジャー。
試験では解答免除も廃止になるなど、資格の全体のレベルが上がっていることがわかりました。
それだけに、ケアマネジャーは今後の介護業界において、今まで以上に重要視される資格となるかもしれません。
介護職員として働くことや、現在の資格を他の仕事に活かすことに興味がある人は、ケアマネジャーの資格も選択肢のひとつに入れてみてくださいね。
参考サイト
東京都福祉保健局「介護支援専門員実務研修受講試験」(2018年11月2日,http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kourei/shikaku/senmon.html)
ユーキャンのケアマネジャー講座「資格・検定試験ガイド」(2018年11月2日,https://www.u-can.co.jp/%E3%82%B1%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%83%8D/exam/)
公益財団法人 東京都福祉保健財団「実務研修受講試験|東京都介護支援専門員」(2018年11月2日,http://www.fukushizaidan.jp/101caremanager/shiken.html)
社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会 福祉研修センター(2018年11月2日,http://www.knsyk.jp/s/hataraku/pdf/29tuuti_30henkou_caremane.pdf)