厚生労働省によると、平成27年9月16日に公布された新たな法律「公認心理師法」により、平成29年9月15日までに施行され、平成30年までに「公認心理師」という新たな国家資格試験が行われることとなりました。
これまで心理にかかわる専門職資格は、「臨床心理士」などの民間資格のみで国家資格はありませんでしたが、「公認心理師法」により国家資格の「公認心理師」も取得可能となります。
それぞれの違いはどこにあるのか、現在資格を保有している人への経過措置などもご紹介します。
公認心理師とは
公認心理師とは、心理学への専門的知識やスキルをもつことを証明する国家資格です。
「国民の心の健康」にかかわり、心の健康を保持増進することを目的とした資格として、厚生労働省では、以下の行為を行う者をいうと定義しています。
(1)心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
(2)心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
(3)心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
(4)心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
◆引用元:公認心理師 |厚生労働省
公認心理師法資格の取得条件やすでに臨床心理士などの民間資格を有して働いている方向けの経過措置なども発表され、徐々にその内容が固まりつつある段階です。
心理学に興味があり臨床心理士などの資格取得を目指そうとしている方やすでに資格をもっている方は、今後の厚生労働省の発表をしっかりチェックしておくようにしましょう。
公認心理師の資格取得
厚生労働省が管轄する国家試験に合格し、公認心理師登録簿に登録されることで資格取得が可能です。
試験には受験資格が定められており、以下に該当する方が対象となっています。
1 大学において主務大臣指定の心理学等に関する科目を修め、かつ、大学院において主務大臣指定の心理学等の科目を修めてその課程を修了した者等
2 大学で主務大臣指定の心理学等に関する科目を修め、卒業後一定期間の実務経験を積んだ者等
3 主務大臣が1及び2に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認めた者
◆引用元:公認心理師法概要
主務大臣とは、文部科学大臣と厚生労働大臣を指しています。初めての公認心理師の国家試験は平成30年までに実施予定とのことですので、それに合わせて勉強をスタートさせたり、科目の履修をしたりといった対策を立てておくのもひとつの手です。
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臨床心理士との違い
臨床心理士と今後資格が取得できるようになる「公認心理師」の大きな違いは、民間資格か国家資格かという点にあります。
また、資格試験の受験資格に「心理学系の科目履修」が含まれないため、指定大学院を修了すれば、心理学系以外の卒業生であっても資格の取得が可能です。公認心理師の場合は、心理学系の科目履修が必須となっているため、「やや条件が厳しくなるのが公認心理師」ということになります。
臨床心理士とは
公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定している心理学の専門職資格が「臨床心理士」です。“心の専門家”として、“こころの問題”に対して臨床心理学の知識やスキルを使ってアプローチするのが臨床心理士とされています。
全国の公立小中学校に派遣されているスクールカウンセラーは臨床心理士の資格所有者となるなど、国家資格ではないものの、他の民間資格である心理カウンセラーや心理相談員などと呼ばれる専門家とは一線を画した資格と考えられてきました。5年ごとの資格更新や「臨床心理士倫理綱領」を守ることなどが義務づけられていることも、心理専門職として広く認められている理由だといえそうです。
スクールカウンセラーについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。
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臨床心理士と公認心理師の住み分けは今後どうなっていく?
共通する部分の多い臨床心理士と公認心理師ですが、現在の臨床心理士=公認心理師となるのではないとされており、臨床心理士資格もそのまま残っていくと考えられています。臨床心理士に求められている専門性は、以下の通りです。
①種々の心理テスト等を用いての心理査定技法や面接査定に精通していること。
②一定の水準で臨床心理学的にかかわる面接援助技法を適用して、その的確な対応・処置能力を持っていること。
③地域の心の健康活動にかかわる人的援助システムのコーディネーティングやコンサルテーションにかかわる能力を保持していること。
④自らの援助技法や査定技法を含めた多様な心理臨床実践に関する研究・調査とその発表等についての資質の涵養が要請されること
◆引用元:臨床心理士とは | 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会
本質的には、公認心理師と同じものとなりますが、実際に公認心理師が誕生してから、働く場所の住み分けやそれぞれの違いが明確になっていくと予想されます。臨床心理士資格などをすでに所有している方や資格を目指している方向けの経過措置もとられることが予想されます。そのため、まずは臨床心理士の取得を目指して進めながら、公認心理師とのダブル資格取得も視野に入れて検討していくのがよさそうです。
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経過措置の特例について
公認心理師の資格取得では、主務大臣が認めた条件をクリアしている人であれば受験資格を有するとなっています。そのため、現在臨床心理士などの資格を所有して心理学の専門家として働く方や臨床心理士を目指して勉強を進めている方を対象にした経過措置が取られると考えられます。
経過措置の特例としては、現在臨床心理士として働く方であれば、条件に満たなくとも国家試験が受けられるようになったり、法律施行前に臨床心理士になるための指定大学院に入っていれば可となるのではないかと予想されます。
公認心理師法が施行されてから、該当学部や科目の履修を始める場合、大学院まで通って資格を取得するまでには6年以上がかかります。それまでにいち早く資格を取得できるのが、経過措置の特例に当てはまる方やたまたま条件に合致する道を歩んでいた方のみとなるため、資格所有者が多く活躍するようになるまで10年程度かかるといえるでしょう。
国家資格が誕生したからといって、いきなり「こころの専門家になるためには、公認心理師の資格が必須」とはならないはずですので、焦らずに取得資格を検討したり、勉強を進めたりするようにしましょう。
まとめ
新たな国家資格が誕生することで、期待や不安が入り混じっている方もいらっしゃるかもしれませんが、まだ法律自体も施行されてはおらず、未確定な部分も多いのが「公認心理師」の資格です。
現在ある臨床心理士との違いや経過措置の特例などの情報に注意しながら、発表される内容をチェックしていきましょう。そのうえで、今後どう動き、どの資格を取得していくかについて落ち着いて計画を立てていくのがオススメです。
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参考サイト
厚生労働省「公認心理師」(2016年11月7日,http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116049.html)
厚生労働省「公認心理師法概要」(2016年11月7日,http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000116068.pdf)
河合塾「公認心理師」(2016年11月7日,http://www.kals.jp/clinical-psy/official-psy/)