音楽のもつ力を利用して、身体的・心理的なリハビリテーションを行えるのが「音楽療法士」です。
音楽療法士になるには、資格取得を足がかりにする方法があります。
音楽に関わる仕事をしたい人や誰かを癒やす仕事をしたい人、音楽療法士のスキルを身につけて活躍場所を広げたい福祉職員に向けて、この記事では音楽療法士の全容を紹介します。
音楽療法士になるには?

音楽療法士になるには、民間資格を取得する方法があります。
ただし、資格取得は必須というわけではありません。
一般的に作業療法士などの資格と組み合わせる働き方がありますが、海外では音楽療法が広く知られているため、日本でも今後活躍の幅が広がっていくと予想されている仕事・資格でもあります。
音楽療法士の資格には2種類ある

代表的な音楽療法士の資格は、
・日本音楽療法学会が認定している「学会認定音楽療法士」
・全国音楽療法士養成協議会の認定する「音楽療法士(専修・1種・2種)」
の2種類です。
学会認定音楽療法士
1995年に設立された「日本音楽療法連盟」が発展して2001年に発足された「日本音楽療法学会」認定の資格です。
音楽療法士の資格のなかでもポピュラーな認定資格で、2010年度末で2,000名ほどの学会認定音楽療法士が生まれています。
日本音楽療法学会での、音楽療法の定義は以下の通りです。
音楽療法とは「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、 心身の障害の軽減回復、機能の維持改善、生活の質の向上、問題 となる行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること」と定義します。 (日本音楽療法学会 ガイドライン11)
◆引用元:日本音楽療法学会とは<音楽療法の定義ならびに教育理念>:日本音楽療法学会
上記の定義のもと、歌を歌ったりするだけでなく、個々に合わせた音楽を提供し成果を分析しながら支援をしていくことが音楽療法士の仕事としています。
学会認定音楽療法士になるには、2通りの方法があります。
ひとつめは、認定校を卒業すること。
ふたつめは、学会主催の試験に合格し、「学会認定音楽療法士(補)」の資格取得試験を受ける条件をクリアし、筆記試験を受けること。
筆記試験に合格して学会認定音楽療法士(補)を取得後、面接試験に合格すれば、学会認定音楽療法士の資格を取得できます。
音楽療法士(専修・1種・2種)
「全国音楽療法士養成協議会」が認定している「音楽療法士(専修・1種・2種)」は、福祉施設や病院などに勤める人を多く輩出している資格です。
全国音楽療法士養成協議会に加盟する大学または短期大学で音楽療法についての単位を履修し、卒業することが受験資格です。
専修・1種・2種を取得するには、それぞれ以下の条件が関わってきます。
専修:修士レベルで協議会指定の91単位以上を取得し大学院等を修了していること
1種:学士レベルで協議会指定の98単位以上を取得し、大学等を卒業していること
2種:短期大学士レベルで協議会指定の53単位以上を取得し、短期大学等を卒業していること
加盟校の学生であっても、必ず卒業(修了)していることが条件です。
音楽療法士は音楽で人を癒やすリハビリの専門家!

音楽を聞く・演奏するなどの行為は、緊張緩和や不安軽減につながったり、痛みを和らげたりすることに一定の効果があるとされています。
楽器演奏は運動機能の維持や向上に役立ち、合唱や合奏は社会性を育み、ストレスが減少するなど、音楽には人間の心身によい影響を与える力があるのです。
音楽療法士は、こうした音楽の力を活用し、リハビリテーションのプログラムを作成することが主な業務。
おもに病気や障がいがある人など、なんらかのケアを必要とする老若男女に向けて、リハビリテーションプログラムを行います。
療法の内容は、その人に合ったものが作成される場合も。
例えば、失語症の人に歌を使ったリハビリテーションを行ったり、認知症患者にゆかりのある曲を聞かせて記憶を刺激したり、音楽を流しながら体操を行ったりなど、さまざまな療法を実施します。
リハビリテーションに関わるため、音楽療法士は、作業療法士、介護士、看護師、医師など、他職種の人たちとも密に連携を取ることが求められます。
また、医療や福祉の領域に携わる職種のため、心理学や医学、福祉学の知識も必要です。
活躍場所はどこ?
音楽療法士の代表的な職場は以下のとおりです。
・高齢者介護施設
・ホスピス
・デイサービスセンター
・障害者(発達)支援施設
・放課後等デイサービス
・病院
また、フリーランスとして活動する音楽療法士もいます。
音楽療法士に向いている人の特徴は?
第一に、音楽が好きなことは必須です。
音楽療法の現場では、音楽療法士が音楽を楽しむ姿を見せることが大切になります。
ジャンルを問わず音楽が好きだったり、音楽の知識が豊富だったり、音楽に関する感度を鈍らせないことが重要です。
また、楽器の演奏技術も求められます。
ピアノやギター、打楽器などを使って伴奏したり、楽器演奏を教えたりなどの業務もあるため、一定の演奏技術は身につけておきましょう。
人とコミュニケーションを取ることや人を助けたいと思う心、音楽を通じて人を喜ばせたい気持ちも音楽療法士には欠かせません。
音楽療法士は、演奏家や音楽家とは違い、ケアを必要とする人の治療を行う仕事です。
そのため人と接することが好きだったり、社会福祉に興味があったり、誰かの役に立ちたい心をもっていたりなど、は向いているでしょう。
音楽療法士の将来性は?子どもの発達分野でニーズ上昇

音楽療法士は、海外ではメジャーな療法として知られており、日本と比べて積極的に医療や福祉の現場で取り入れられています。
しかし、近年は日本でも音楽が人の心身にもたらす影響や効用について注目されており、リハビリテーションのひとつとして普及され始めました。
平成28年には「世界音楽療法連盟(WFMT)が主催する「世界音楽療法大会」が茨城県つくば市で開かれるなど、日本における音楽療法の地位は発展しつつあるようです。
また、音楽療法は子どもの発達分野で高いニーズを獲得しつつあります。
音楽療法は社会性の育みにアプローチできる療法のため、発達障がいを抱える子どもたちに行う「療育」のプログラムに取り入れるニーズが高まっているそうです。
現状では民間資格のみが認定されている音楽療法士ですが、国家資格認定を目指して活動を行っている団体もあり、将来国家資格化する期待も寄せられています。
まとめ

音楽が好きで、福祉関係の仕事に就きたいと思っている人にピッタリの音楽療法士。
人の治療や教育に関わってくる仕事ですので、人体学や福祉学などをきちんと勉強し、資格を取得しておくことをオススメします。
将来性も期待されている仕事・資格のため、福祉系の職種に就いている人がスキルアップの一環として取得するのもよいでしょう。
音楽を通じて人を癒やし、励まし、社会貢献したい人は資格の取得から挑戦してみてくださいね。
参考サイト
- 日本音楽療法学会「音楽療法士への道」(2016年11月17日,http://www.jmta.jp/qa/)
- 全国音楽療法士養成協議会(2016年11月17日,http://jecmt.jp/)
- 国立音楽院「音楽療法学科」(2016年11月17日,http://www.kma.co.jp/departments/music-therapy/)
- 日本福祉教育専門学校「社会福祉学科[音楽療法コース]」(2016年11月17日,http://www.nippku.ac.jp/faculty/15/)
- ミュージックインストラクターズ養成学院「音楽療法士について」(2016年11月17日,http://www.music-instractors.com/course/music_therapist/about)
- 日本ナラティブ音楽療法協会(2016年11月17日,http://jnmta.businesscatalyst.com/)
- 東京フローラルアート・楽学ネット「音楽療法入門」(2016年11月17日,http://www.nfa.co.jp/em/)
- 【スタディサプリ 進路】「音楽療法士のズバリ!将来性は?」(2019年2月21日,https://shingakunet.com/bunnya/w0034/x0458/tenbou/)
- 大学・専門学校の【スタディサプリ 進路】「音楽療法士になるには」(2019年2月21日,
https://shingakunet.com/bunnya/w0034/x0458/) - 日本福祉教育専門学校「音楽療法士の仕事内容」(2019年2月21日,https://www.nippku.ac.jp/license/mt/work/)
- 日本福祉教育専門学校「音楽療法士」(2019年2月21日,
https://www.nippku.ac.jp/license/mt/)