臨床心理士は心の問題にアプローチする非常に専門性の高い職種です。「臨床心理士」と聞くと「医師が取る資格では?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、医師に限らず取得することができます。ただし、臨床心理士になるための試験は誰でも受けられるわけではなく、受験資格には細かい条件が定められています。
それでは、臨床心理士がいったいどのような資格なのか、取得方法や活躍の場について詳しく紹介していきます。
臨床心理士と心理カウンセラー・心理相談員の違い
皆さんは、臨床心理士と心理カウンセラーや心理相談員の違いについてご存じですか。
実は、心理カウンセラーや心理相談員には特別な資格は必要ありません。つまり誰でも「心理カウンセラー」と名乗ることができ、心理系の仕事に就くことも可能なのです。
また、臨床心理士以外の心理系の資格として「メンタルケア心理士」「産業カウンセラー」「認定心理カウンセラー」など、さまざまな資格が日本では乱立した状態になっています。その理由として、心理系の資格には国家資格が存在しないことがあげられます。心理系資格の中には、高度な知識・技術が必要になる資格から、短期間のものや通信講座で取得できるものまで、様々なものが存在します。
これらの中でも臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会が与える権威のある資格と位置づけられています。その証拠として、臨床心理士の資格保持者5,000名が、文部科学省の実施する国公立中学校や小学校において、スクールカウンセラーとして活躍しています。
臨床心理士の仕事内容
臨床心理士は心の病気や問題に取り組む心理専門家です。臨床心理士に求められる専門業務は以下の4つです。
▼1:臨床心理査定
心理テストや観察面接を通して相談者の問題の所在を明らかにし、どのように援助すべきかを検討します。
▼2:臨床心理面接
相談者との人間関係を構築し、ケアしていく中心的な臨床心理士の専門行為に該当します。面接の結果、相談者との間に、共感・納得・理解・再生といった心情が生まれます。臨床心理面接では、さまざまな診療心理学的技法を用いて心の支援を行います。
▼3:臨床心理的地域援助
臨床心理士の相談者は個人だけではありません。地域や学校、会社に所属する人々の心の健康維持や問題の支援活動を行うことも、臨床心理士に求められる仕事です。コミュニティ全体の心の情報整理や環境調整を行う、いわば「地域援助」に位置づけられる業務です。
▼4:1~3の業務に関する調査・研究
臨床心理士は相談者のケアを行っていく中で、自らの技術・知識を確実なものにするために、臨床心理的調査や研究活動にも力を入れます。高度な専門家として、常に知識・技術の維持や発展に向けて努力を続けます。
臨床心理士になるには?
それではどのようにして、臨床心理士の資格を取得するのかみていきましょう。
受験資格
まずは受験資格についてです。前述した通り、誰でも臨床心理士の試験を受けられるわけではありません。臨床心理士養成に関する指定の大学院を修了していることが求められます。受験資格は下記の通りです。
〈主な受験資格〉
・指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を充足している者
・臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者
・諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後の日本国内における心理臨床経験2年以上を有する者
・医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験2年以上を有する者 など
◆引用元:日本臨床心理士資格認定協会 受験資格
ここで注意していただきたいのは、学歴において条件が制定されているのは「大学院を修了している」という点です。つまり大学の学部は理系・文系問われないということです。
一般的に修士課程は2年間ですので、臨床心理士の受験資格は最短2年で取得できるということになります。さらに、指定大学院の中には通信制のところもあるので、学費を抑えられる上、働きながら学位を取ることが可能です。
大学院の学費は学校によってそれぞれ異なるので、一概にはいえませんが、例えば通信制の放送大学大学院の場合だと必要な学費は53万円程度です(2017年2月時点)。
試験
臨床心理士の試験は年に1回です。まず書類申請時に1,500円がかかります。審査料は30,000円で筆記試験と口述面接試験があります。試験に合格後は、臨床心理士の名簿に登録する必要があります。その登録料に50,000円かかります。
さらに、臨床心理士の資格は5年毎の更新が必要です。更新するためには、認定協会や臨床心理士会が主催するワークショップへ参加したり、論文を発表したりする必要があります。
臨床心理士はどんなところで活躍できるの?
臨床心理士が活躍できる場は、医療分野から教育、司法、福祉、産業に至るまで多岐にわたります。
医療分野
医療分野では心の病気をもった人に心理的援助を行います。また病院だけではなく市町村の保健センターなどで小児科医や保健師とともに子どもの健康診査や発達相談にもかかわります。
教育分野
教育分野では学校内での相談室や教育センター、教育相談機関などで子どもの心理的援助を行います。子どもだけではなく、親や教師とのコンサルテーションも進めます。
司法分野
司法分野では家庭裁判所や刑務所、少年院、児童自立支援施設などで心理面接などを行います。
福祉分野
福祉分野では児童相談所や老人福祉施設、心身障害者福祉センター、女性相談センターなどで子どもの心身の発達や女性問題、高齢者の問題などに取り組み心のケアを行います。
産業分野
産業分野では、企業内相談室や企業内健康管理センターなどで面接を通して、労働環境をコンサルテーションしたり、ハローワークなどでは職業への適性をめぐる問題などの心理的ケアを行ったりします。
このように臨床心理士は多くの分野で働くことができます。
おわりに
厚生労働省によると、心の病気を抱えている患者数は年々増加しています。
今後も患者数は増えることが予想され、臨床心理士の需要はますます高まっていくと考えられます。臨床心理士の資格を取得すれば、心理系の仕事の就職の際には有利になり、資格があることで同じポジションであっても給与が異なることもあります。「心理系の仕事に就ついて人々の心のケアをしたい」という方は、ぜひ臨床心理士の資格の取得を検討してみてください。
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参考URL
http://fjcbcp.or.jp/shinrishi/
http://www.ouj.ac.jp/hp/purpose/syusi.html
http://psychology.sakura.ne.jp/e-4.html
http://fjcbcp.or.jp/rinshou/shinsa/
http://fjcbcp.or.jp/rinshou/shokuiki/
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html